5G通信基地局向け 低誘電材料

5G通信の製品は、5G通信の製品と部品を構成する素材の比誘電率(Dk)・誘電正接(Df)がポイントになります。基地局においては、より効率良く電波を送るために、その部品・場所に合わせた比誘電率と誘電正接の制御が必要となります。また、基地局では金属またはセラミック製のフィルターを多数個配置するため、重量増になり設置工数および作業負荷が大きくなります。カバー・筐体・フィルター・アンテナの樹脂化による軽量化、および複雑形状一体化が5G通信環境整備に貢献します。

旭化成は、5G通信基地局向け材料として、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)ザイロン™をご提案します。ザイロン™は、ポリフェニレンエーテル (PPE)と他樹脂を混合したポリマーアロイの総称で、優れた複数の特性を有します。高い耐熱性を備えた上、難燃性と絶縁性、幅広い温度領域での寸法安定性、耐水性にも優れ、なおかつ低比重といった特長があります。さらに、相手となる他樹脂の特長も生かしながらPPEを添加することによって、PPEの特長との相乗効果を狙ったポリマーアロイです。

ザイロン™の母材であるPPEは、低誘電率、低誘電正接という特徴を備えることから、情報通信分野での適用に適しています。またPPEは、高いガラス転移温度を有しており、他の高耐熱性樹脂に比べて誘電特性の温度依存性が小さい点も特徴です。これは、さまざまな温度環境を想定される中で安定した通信品質を確保する上で、重要な利点です 。

ザイロン™・サンフォース®と各樹脂(非強化)との誘電特性比較
ザイロン™・サンフォース®と各樹脂(非強化)との誘電特性比較

以下で、5G通信基地局を構成する部品ごとにザイロン™の各グレードをご提案します。(クリックすると詳細をご確認いただけます。)

旭化成は、5G通信基地局向け材料として、変性PPE樹脂ザイロン™をご提案します。

5G通信基地局 アンテナカバー(レドーム)向け材料 xyron 443Z・AA181-16(開発材)・345Z(開発材)

5G通信基地局アンテナカバー(レドーム)向け材料として、ザイロン™低誘電・難燃V-0グレード 443Z、開発材AA181-16と、耐候変色抑制グレード 開発材345Zをご提案します。

旭化成の変性PPE樹脂ザイロン™は、電波透過性の改善や、物性劣化の低減、耐候変色の抑制など、5G通信基地局アンテナカバー(レドーム)の幅広いニーズにお応えすることが出来ます。

 

項目 単位 試験方法 試験条件 ザイロン™ 443Z 開発材
ザイロン™ 345Z
開発材
ザイロン™ AA181-16
Si-PC
特長 耐候変色改良 誘電特性改良
荷重たわみ温度 ISO 75-1 1.8MPa 108 96 106 124
燃焼性 UL94 V-0
(0.75mm)
V-0 eqiuv.
(1.5mm)
V-0 eqiuv.
(1.5mm)
V-0
(0.8mm)
比誘電率 SPDR method 10GHz 2.7 2.9 2.6 2.9
誘電正接 10GHz 0.0046 0.005 0.0016 0.0078
シャルピー衝撃強さ kJ/m2 ISO 179 23℃/50%RH 42 35 47 75

ザイロン™ 低誘電・難燃V-0グレード 443Z、AA181-16(開発材)

ザイロン™ 低誘電・難燃V-0グレード 443Z、開発材AA181-16は、耐加水分解性および高衝撃性に優れ、オールカラーで難燃性 UL94 V-0 を達成しています

最外装であるアンテナカバー(レドーム)は軽量化や耐候性の要求に加え、電波透過性を向上させるために低誘電特性が求められます。ザイロン™ 低誘電・難燃V-0グレードでは、従来の材料では困難であった難燃性 (UL94V-0)と低誘電特性の両立を実現しています。

これまで、アンテナカバー(レドーム)の材料にはポリカーボネート (PC) などが使用されてきましたが、誘電特性の観点では十分ではありません。旭化成のザイロン™開発材「AA181-16」をアンテナカバー(レドーム)に採用することで、その課題解消が期待できます。

ザイロン™開発材「AA181-16」レドーム電波透過性シミュレーション結果(周波数帯@28GHz)
ザイロン™開発材「AA181-16」レドーム電波透過性シミュレーション結果(周波数帯@28GHz)
ザイロン™443Z DH(85℃×85%RH)試験 23℃シャルピー衝撃強度
ザイロン™443Z DH(85℃×85%RH)試験 23℃シャルピー衝撃強度

ザイロン™ 耐候変色抑制グレード 345Z(開発材)

ザイロン™ 耐候変色抑制グレード 開発材345Zは、高い難燃性・耐衝撃性を維持しながら耐候変色を抑制したグレードです。
下図の通り、ポリカーボネート (PC)と比較し、耐候試験後の色差(ΔE)が小さくなっています。

物性等、詳細はダウンロード資料をご確認ください。

ザイロン™耐候変色抑制開発グレード345ZとPCの耐候試験後のΔEの変化の比較
ザイロン™ 開発品345ZとPCの耐候試験後のΔEの変化の比較

5G通信基地局 誘電体移相器(フェーズシフター)向け材料 xyron Dk/Dfコントロールグレード

PPE特有の低誘電特性と旭化成独自のコンパウンド技術を組み合わせて、誘電特性をコントロールしたグレードの開発を進めています。

誘電体材料には波長短縮効果があることが知られており、高誘電率(高Dk)且つ低誘電正接(低Df)の材料をアンテナに使用すると小型化が可能であったり、位相シフトのための誘電体移相器(フェーズシフト)に使用されたりと様々なシーンで応用されています。

一方で、高Dkと低Dfはトレードオフの関係にあり、両方を実現することは一般的には困難な技術です。ザイロン™は、この高Dk/低Dfを実現させるためにDk/Dfコントロールグレードを開発しており、前述したようなアンテナの小型化や、基地局で使用される誘電体移相器(フェーズシフター)に好適な材料となっております。

お客様のニーズに合わせた誘電特性グレードをご提案することで、次世代通信基地局の更なる高機能化に貢献します。

物性等、詳細はダウンロード資料をご確認ください。

変性PPE樹脂ザイロン™の幅広い誘電特性
変性PPE樹脂ザイロン™の幅広い誘電特性

5G通信基地局 アンテナボード(アンテナ素子ホルダー)向け材料 xyron AA222-2(開発材)

ザイロン™ 開発材AA222-2は、難燃性を向上させた低誘電特性のPPS/PPEアロイです。

従来アンテナボード(アンテナ素子ホルダー)に使用されてきたPPSよりも低比重のため、軽量化が可能です。また、めっき性と加工性(低そり・低バリ)にも優れます。

物性等、詳細はダウンロード資料をご確認ください。

5G通信基地局 アンテナボード(アンテナ素子ホルダー)

5G通信基地局 キャビティー型RFフィルター・導波管スロットアレイアンテナ向け材料 xyron AA105-52(開発材)

5G基地局キャビティー型RFフィルター・導波管スロットアレイアンテナ向けとして、ザイロン™のグレード開発を進めています。

基地局では金属またはセラミック製のRFフィルター・導波管スロットアレイアンテナを多数個配置するため重量増になり、設置工数および作業負荷が大きくなります。さらに5G通信になれば、基地局設置数も増加します。これにより、部材のさらなる軽量化が求められることになります。

ザイロン™AA105-52(開発材)は、高耐熱、金属に相当する低線膨張性を実現しており、RFフィルター・導波管スロットアレイアンテナの樹脂化に貢献しうる材料です。

5G基地局 キャビティー型RFフィルター向けザイロン開発グレード

また、ザイロン™はメッキ性に優れており、下図の評価結果の通り、ポリカーボネートやポリプロピレンといった他材料と比べ、銅との密着性が良好です。

銅と基材の密着評価(テープによる銅剥離有無)
銅と基材の密着評価(テープによる銅剥離有無)

そして、ザイロン™AA105-52(開発材)は、幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現しており、様々な温度帯の環境下での寸法安定性が求められる金属製品の軽量化に最適な樹脂材料です。

幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現
幅広い温度帯で安定した低線膨張係数を実現

物性等、詳細はダウンロード資料をご確認ください。

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