合成樹脂(プラスチック)とは
合成樹脂(プラスチック)の定義、歴史、分類についてご紹介します。
1.合成樹脂(プラスチック)の定義
JIS K6900(プラスチック – 用語)ISO 472では、合成樹脂(以下プラスチック)の定義は、『必須の構成成分として高重合体を含みかつ完成製品への加工のある段階で、流れによって形を与え得る材料』、と定義している。
2.プラスチックの歴史
プラスチックの開発の経緯を以下に示します。
新しい樹脂の開発・企業化は、欧米企業が先行しており、日本において開発・企業化されたものは少ない。1980年代以降は、新規プラスチックの開発・企業化が少なく、コンパウンド・アロイ技術等の活用により材料開発がされている。
プラスチック名 (商品名) |
工業化開始時期 | ||||
---|---|---|---|---|---|
海外(国名(メーカー)) | 日本(メーカー) | ||||
セルロイド | 1870 | 米(Eastman Kodak) | 1910 | 堺セルロイド | |
フェノール樹脂 | 1909 | 米(Bakelite) | 1915 | 三共 | |
ユリア樹脂 | 1918 | 独(BASF) | 1930 | 大日本セルロイド | |
酢酸セルロース | 1922 | 独(Bayer) | 1932 | 日本合成化学 | |
酢酸ビニル樹脂 | 1928 | 独(Wacker) | 1936 | 日本合成化学 | |
メタクリル樹脂 | 1930 | 独(IG) | 1938 | 旭硝子、藤倉工業、住友ベークライト | |
スチレン樹脂 | 1930 | 独(IG) | 1957 | 三菱モンサント、旭ダウ | |
塩化ビニル樹脂 | 1931 | 独(IG) | 1940 | 日本窒素 | |
ポリエチレン | 1939 | 英(ICI) | 1958 | 住友化学、三井石化 | |
ポリアミド樹脂 | 1941 | 米(DuPont) | 1951 | 東レ | |
PTFE | 1942 | 米(DuPont) | 1956 | ダイキン | |
エポキシ樹脂 | 1943 | 米(Shell)、スイス(Ciba) | 1962 | 三菱油化 | |
ABS樹脂 | (blend) | 1948 | 米(U.S.Rubber) | 1963 | 日東化学、浜野繊維、宇部サイコン、旭化成、鐘淵化学、三井化学 |
(graft) | 1949 | 米(Monsant) | |||
PET | 1948 | 英(ICI) | 1957 1964 |
東レ、帝人 帝人(PET/GF) |
|
ポリプロピレン | 1957 | 伊(Montecatini) 米(Hercules) 独(Hoechst) |
1962 | 三井化学 | |
ポリカーボネート | 1958 | 独(Bayer) | 1959 | 帝人 | |
ポリアセタール(ホモ) | 1958 | 米(DuPont) | 1972 | 旭化成 | |
ポリアセタール(コ) | 1959 | 米(Celanese) | 1968 | ポリプラスチックス | |
ポリイミド | 1964 | 米(DuPont) | |||
ポリスルホン | 1965 | 米(UCC) | |||
変性PPE | 1967 | 米(GE) | 1979 | 旭化成 | |
PBT | 1970 | 米(Celanese) | |||
PPS | 1970 | 米(Philips) | 1986 | 東ソーサスティール | |
PES | 1972 | 英(ICI) | |||
ポリアリレート | 1973 | ユニチカ | |||
PEEK | 1980 | 英(ICI) | |||
ポリエーテルイミド | 1981 | 米(GE) | |||
LCP | (X7G) (Zyder) (Vectra) |
1976 1984 1985 |
米(Eastman Kodak) 米(Dartco) 米(Celanese) |
||
メタロセン触媒 sy-PS(ザレック) |
(1985) 1997 |
出光興産 出光石化 |
参考文献
1) https://main.spsj.or.jp/nenpyo/kagakushi.php, 高分子学会編,「日本の高分子科学技術史」年表(改訂版)
2) 高分子(増刊),47,84,87(1998)
3) 佐伯,尾見, “新ポリマー製造プロセス”, 工業調査会(1994)
3.プラスチックの分類
プラスチックは種々の考え方による分類がありますが、熱的特性面から、熱可塑性樹脂・熱硬化樹脂の2分類、又熱可塑性樹脂については、高分子鎖の配向度合いから、結晶性樹脂・非結晶性樹脂の2分類に、又耐熱性の度合いから、汎用樹脂、汎用エンジニアリング樹脂、スーパーエンジニアリング樹脂の3分類に分類されるのが、一般的であります。
以下に上記分類の概略を説明します。
〈備考〉○:結晶性樹脂 △:非結晶性樹脂
熱 可 塑 性 樹 脂 |
汎用樹脂 | ポリエチレン | ○ |
---|---|---|---|
ポリプロピレン | ○ | ||
ポリスチレン(PS) | △ | ||
アクリロトリル/ブタンジエン/スチレン樹脂(ABS) | △ | ||
ポリ塩化ビニル(PVC) | △ | ||
アクリロニトリル/スチレン樹脂(AS) | △ | ||
メタクリル樹脂(PMMA) | △ | ||
塩化ビニル(PVC) | △ | ||
汎用エンジニアリング樹脂 | ポリアミド(PA) | ○ | |
ポリアセタール(POM) | ○ | ||
ポリカーボネート(PC) | △ | ||
変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE) | △ | ||
ポリブチレンテレフタレート(PBT) | ○ | ||
GF強化ポリエチレンテレフタレート(GF-PET) | ○ | ||
超高分子量ポリエチレン(UHPE) | ○ | ||
スーパーエンジニアリング樹脂 | ポリフェニレンスルフィド(PPS) | ○ | |
ポリイミド(PI) | △・架橋 | ||
ポリエーテルイミド(PEI) | △ | ||
ポリアリレート(PAR) | △ | ||
ポリスルホン(PSF) | △ | ||
ポリエーテルスルホン(PES) | △ | ||
ポリエーテルエーテルケトン(PEEK) | ○ | ||
液晶ポリマー(LCP) | ○ | ||
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE) | ○ | ||
熱硬化性樹脂 | フェノール樹脂 | ||
尿素樹脂 | |||
メラミン樹脂 | |||
不飽和ホリエステル樹脂 | |||
エポキシ樹脂 等 |
1.熱可塑性樹脂とは
熱を加えることにより、軟化し、冷却により固化し、これを繰り返すことができる。融点又は、ガラス転移温度を持つ樹脂の総称です。
2.熱硬化性樹脂とは
加熱することにより、高分子鎖間に複雑な反応が進み、三次元的な構造に進み、再加熱によっても、不融の状態に硬化する性質を持つ樹脂の総称です。
3.結晶性樹脂とは
融点以下の温度では、高分子鎖が規則正しく配列する性質のある、熱可塑性樹脂の総称であります。融点が高い程、耐熱性に優れます。
4.非結晶性樹脂とは
熱を加えることにより、ガラス状からゴム状状態になる温度を、ガラス転移温度と定義しますが、ガラス転移温度以下の固化した状態においても、高分子鎖が、規則正しく配列しない性質のある熱可塑性樹脂の総称です。
ガラス転移温度が高い程、耐熱性に優れます。
5.汎用樹脂とは
耐熱性が100℃未満で、強度が49MPa(500kgf/cm2)未満、曲げ弾性率が2.4GPa(24000kg/cm2)未満の特性を持つ、熱可塑性樹脂の総称です。
6.汎用エンジニアリング樹脂とは
耐熱性が100℃以上で、強度が49MPa(500kgf/cm2)以上、曲げ弾性率が2.4GPa(24000kgf/cm2)以上の特性を持つ、熱可塑性樹脂の総称です。
7.スーパーエンジニアリング樹脂とは
汎用エンジニアリング樹脂よりも、耐熱性がさらに高く、150℃以上の高温でも、長期間使用できる熱可塑性樹脂の総称です。
8.液晶ポリマーとは
樹脂が、高温で溶融したり、溶媒に溶けこんで溶解したりして、流動状態になっても、分子の鎖がほぼ規則的に整列しているような状態を示す高分子を、液晶(性)ポリマー(Liquid Crystalline Polymer; LCP)といいます。
この中で、高温溶融時に液晶性を示すものをサーモトロピック(熱溶融型)液晶ポリマー といいます。
分子構造から、全芳香族系と、半芳香族系に分類され、全芳香族系の方が耐熱性は高いが、流動性が悪くなります。
熱可塑性プラスチックの分類
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