PFASとは
PFAS規制とその影響・代替材料についてご紹介します。
1.PFASとは
PFASとは、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(Per- and Polyfluoroalkyl Substances)の総称であり、PFASは、少なくとも1つの完全にフッ素化されたメチルまたはメチレン基(水素、塩素、臭素、ヨウ素が結合していない)を含むフッ素化合物と定義されています*1。PFASには非常に多くの化学物質が該当し、OECDによると4,730種が、アメリカEPAによると14,735種あるとされています*1,2。その種類によって性質が異なりますが、耐薬品性、耐熱性、撥水性、絶縁性などの優れた特性を持つことから、家庭から産業まで非常に幅広い用途で使用されています。
*1:Reconciling Terminology of the Universe of Per- and Polyfl uoroalkyl Substances (OECD)
*2: Navigation Panel to PFAS Structure Lists (EPA)
2.PFAS規制とその概要
一部のPFASは、環境や人体への影響などが懸念され、PFASを巡る規制動向は刻一刻と動いています。国連、欧、米各州等の全世界で規制の枠組みが議論され、成立している状況です。大きな方向性として、① 国連のストックホルム(POPs, Persistent Organic Pollutants)条約、② EUの動向について取り上げます。
① 国連のストックホルム条約(POPs条約)
- 1万種を超えるPFASの中でも、PFOS、PFOA、PFHxSの3種類が、難分解・蓄積性、毒性を理由に、批准国における製造・使用の規制対象とされています*3。
- 日本国内においては、化審法の第一種特定化学物質に指定されます。
- これら3種のPFASは、日本フルオロケミカルプロダクト協議会にて「特定PFAS」と定義されています*4。
- 長鎖ペルフルオロカルボン酸(LC-PFCA)についても規制対象化が検討されています*3。
- 社会で広く使用されているPTFEやPFAといったフッ素樹脂・フッ素ゴムなどはPOPs規制の対象ではありません。
「特定PFAS」の分子構造
② EUの動向
- 現在、欧州化学品庁(ECHA)がPFAS制限案を検討しています。
- 制限案における重要な考え方が、各PFASのリスクや深刻さが明らかになっていない状態で保護的措置を講じる、という考えです。この考えに基づいて、現状代替品がない用途に対してであっても制限対象が設定されます。
- 2024年1月時点では、最速で2025年内にも欧州議会でPFAS規制が審議・採択される見込みとされています。採択後18ヶ月の移行期間が設けられていますが、代替手段がまだなく、代替手段の開発に時間がかかる用途については5年あるいは12年の猶予期間が設定されています(用途詳細はこちら*5をご確認ください)。
- 現時点無害とされているポリマーも対象となる可能性があるため、動向が非常に注目されています。
- ECHAは2023年パブリックコメントを募集しており、各ステークホルダーから意見を集約した上で議論を進める見込みです(本規制動向は現在進行形のため、状況が変わる可能性があります)。
*5:ANNEX XV RESTRICTION REPORT (ECHA)
3.PFASの代替材料について
現在様々な場面で活用されているPFAS(「特定PFAS」以外の大部分のPFAS)は、耐熱性、耐薬品性、摺動性、電気特性等、優れた特性を多数有しており、至るところで我々の生活を支えています。PFASの100点満点の代替材料はなかなか存在せず、そのPFASが使われている用途・理由に合わせて、代替材料を検討していく必要があります。例えば、摺動性が最重要な用途であれば、POM等の樹脂が適用可能ですが、耐熱性に劣るため、適用製品毎に検討が必要です。また、目に触れにくいところでは、摺動性や難燃性向上のための添加剤としてPFASが用いられている場合があります。その場合、PFAS非含有の摺動材料や難燃材料を選択する必要があります。
(執筆:佐藤功、佐藤功技術事務所)
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