「旭化成ヨーロッパ発『バッテリープロジェクト』 」
インタビュー
強度・耐久性を飛躍的に向上させ、ウエルドラインからの破壊を回避
2024.07.10
技術・製品紹介
旭化成は、高い強度や耐久性が求められる自動車の連結部品(サスペンションアーム)の金属代替による、大幅な軽量化に向け、ポリアミド樹脂 レオナ™(PA-GF)とポリアミド樹脂を含浸させたUDテープ(Uni-directional Tape、一方向連続繊維強化材料)を一体化させたマルチマテリアル構造をご提案します。
ポリアミド樹脂レオナ™ + UDテープのマルチマテリアル構造によるサスペンションアームの金属代替
この ポリアミド樹脂レオナ™ + UDテープの連結部品には、以下のような特長があります。
なお、下表のとおり、ガソリン車を想定した80℃50%RHの高温多湿環境において、材料異方性を考慮した強度シミュレーションを実施し、樹脂製サスペンションアームの破壊強度を予測しました。圧縮破壊強度はアルミニウム製に劣るものの、引張破壊強度は優れる可能性を示唆されました。エキゾーストからの熱の影響を受けない電気自動車であれば、更に樹脂製サスペンションの破壊強度は向上すると推測します。
【80℃50%RH環境における
シミュレーション結果】
モデル | 引張破壊荷重 (kN) |
圧縮破壊荷重 (kN) |
---|---|---|
アルミニウム鍛造品 | 44.6 | 58.4 |
PA-GF+UDテープ | 73.4 | 39.0 |
※ 樹脂およびUDテープは異方性材料として計算。
従来、アルミニウムなどの金属が用いられてきた自動車の連結部品(サスペンションアーム、モーターマウント、トルクロッド、スタビライザーリンク等)のほか、ドローン、パーソナルモビリティを含む電動バイク、ロボットアーム等の骨格などへの適用を想定しています。
ポリアミド樹脂レオナ™ + UDテープ マルチマテリアル構造体の想定用途例(イメージ)
UDテープでの補強により、射出成形において生じた樹脂の合流跡である、ウエルドラインからの破壊を回避することができ、「強度・剛性の向上」や「応力の分散」につながります。
UDテープによる補強効果―引張試験において取り付け(非ウエルド部)から破断
下図の比較データの通り、ポリアミド樹脂レオナ™ + UDテープで作製した、自動車の連結部品を想定した簡易モデルは、PA-GFのみでの成形品と比較し、強度・耐久性が大きく向上します。
UDテープによる補強効果―引張強度試験での比較
UDテープによる補強効果―引張疲労試験での比較
さらに、冷熱サイクル試験(試験温度:-40℃~90℃ 50%、サイクル数:500回)を行い、母材との線膨張差によるUDテープの剥離・製品強度の低下もほとんどないことを確認しました。
冷熱サイクル試験
下図のように、あらかじめ環状に加工したUDテープを金型に設置し、型内でUDテープとポリアミド樹脂レオナ™を瞬時に一体化させる製造方法で、効率的な生産を可能にします。
ポリアミド樹脂レオナ™ + UDテープのマルチマテリアル構造体の製造方法
この方法で製造したサスペンションアームは、アルミニウムの鍛造品 (バージン品)と比較して、製造工程を簡素化でき、工程管理コスト削減を可能にします。また、製造工程におけるCO₂排出量を50~70%削減できる可能性があります。
サイクルタイム・CO₂排出量の比較
高い強度・耐久性が求められる連結部品の金属代替に向け、ポリアミド樹脂 レオナ™ + UDテープのマルチマテリアル構造にご興味をお持ちいただけましたら、ぜひお問い合わせください。
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