イオンマイグレーションとは

マイグレーションには、エレクトロマイグレーションとイオンマイグレーション(エレクトロケミカルマイグレーション)の2種類があり、本ページでは外的要因に伴うマイグレーションであるイオンマイグレーションについて取り上げます。

イオンマイグレーションは、電極間の絶縁性が化学または熱等の要因により不良となり、電極金属がイオンとして溶出することで短絡を起こす現象です。

旭化成では、電気電子用途で使用されるお客様の製品作りをサポートするために、イオンマイグレーション抑制、難燃性、各種電気特性(耐トラッキング性 (CTI)等)、耐グローワイヤー性 (GWIT等) 、長期耐熱特性(UL746B RTI等)、耐候性 (UL746C f1, f2)に優れたエンジニアリングプラスチックをご用意しています。
例えば、イオンマイグレーションが発生しない材料を使用することにより端子間での短絡が抑制されるため、製品の安全性向上、小型化・軽量化に貢献できます。

イオンマイグレーション抑制した赤リンフリー難燃樹脂材料 レオナ™・ザイロン™ 難燃グレード

旭化成のレオナ™ザイロン™の難燃樹脂材料は難燃剤起因のイオンマイグレーションが発生しない、もしくは赤リン使用品よりも進行が遅く、電気電子用途に好適な材料を取り揃えています。

イオンマイグレーション耐性評価方法

樹脂材料のイオンマイグレーション耐性を評価するための試験方法を説明します。

図1のように各樹脂材料の平板に銅電極を貼り付け、高温多湿な環境下で高電圧をかけます。

イオンマイグレーション耐性評価略図
図1:イオンマイグレーション耐性評価略図

この試験では下記の流れでイオンマイグレーションが発生します。

1:高温多湿環境により難燃剤が分解して腐食成分が発生
2:銅電極が溶解して銅イオンが発生
3:銅イオンが電子を受け取って金属として析出
4:上記1~3が繰り返されることで析出した銅が徐々にもう一方の電極へと伸展

上記の環境試験に一定時間暴露し、電極間の領域に分布する銅を元素分析で調べました。イオンマイグレーションが発生すると、図2のように銅元素が一方の電極からもう一方の電極に向かって徐々に伸展していくことが確認されました。

銅元素の分布確認
図2:銅元素の分布確認

イオンマイグレーション耐性評価結果

まず、赤リン使用品とザイロン™ 難燃グレードの評価結果を図3に示します。
ザイロン™ 難燃グレードではイオンマイグレーションが発生しておらず、一般赤リン品に対して非常に良好な結果であることが確認されました。

一般赤リン品とザイロン™のイオンマイグレーション耐性評価結果
図3:一般赤リン品とザイロン™のイオンマイグレーション耐性評価結果

 

次にレオナ™ 難燃グレードの評価結果を図4に示します。

FR370はイオンマイグレーションが発生していないことが確認されました。またSN11Bではイオンマイグレーション発生が確認されましたが、その伸展は一般赤リン品の半分以下であり、進展速度が遅いことが確認されました。

一般赤リン品とレオナ™のイオンマイグレーション耐性評価結果
図4:一般赤リン品とレオナ™のイオンマイグレーション耐性評価結果

 

以上の評価結果から旭化成のレオナ™ザイロン™の難燃グレードはイオンマイグレーションが発生しにくく、その進行は赤リン使用品よりも遅いため、電気電子用途に好適な材料であることが確認されました。

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