目次
Summary
- プラスチックのリサイクルには、「リサイクルの手法」「原料・分別元」「生まれ変わる製品」の3つの観点があり、これらの観点をもとに、各製品に合わせてリサイクルを取り入れることが可能です。
- Industry wide collaborative frameworks are emerging to ensure that efforts to promote plastic recycling—including techniques and quality standards for taking advantage of recycled materials as they are separated, as well as technologies to mitigate performance degradation—may be openly shared.
- 旭化成では、エンジニアリングプラスチック(エンプラ)の製造時に、リサイクル原料を使いこなす技術・品質の確立、リサイクル後でも性能劣化しない技術の開発、オープンな協業体制の構築を推進しています。
リサイクルの重要性
私たちが日々の生活で使用している様々な製品の主原料は、石油・金属等の有限な資源によるものです。
有限だからこそ、廃棄物を再び資源として活用することができれば、資源確保、廃棄物処理の両面で課題の解決に貢献することができるため、全世界的にあらゆる素材のリサイクルへの取り組みが加速しています。
プラスチックリサイクルにおける3つの観点
プラスチックのリサイクルには様々な方法・種類があり、各製品に合わせて取り入れることが可能です。
ここではプラスチックリサイクルについて、①リサイクルの手法、②原料・分別元、③生まれ変わる製品 の3つの観点からご紹介します。
*リサイクルの原料・分別元、生まれ変わる製品による分類は、廃棄物を新たな製品の原料として再利用する「マテリアルリサイクル」において適応できる考え方です。
観点①:プラスチックリサイクルの手法
プラスチックリサイクルは、手法によって、「マテリアルリサイクル(材料リサイクル)」「ケミカルリサイクル」「サーマルリサイクル(エネルギー回収)」の3つに分けられます。
■マテリアルリサイクルとは
マテリアルリサイクル(材料リサイクル)とは、廃プラスチック類を破砕・溶解などの処理を行った後、同様な用途の原料として再利用することです。国際規格のISO 15270では、Mechanical Recycleに分類されます。
■ケミカルリサイクルとは
ケミカルリサイクルとは、廃プラスチック類を化学的に分解することで原料の状態にまで戻し、製品原料として再利用することです。国際規格のISO 15270では、Feedstock Recycleに分類されます。
*包装用途向けのプラスチックを対象に制定されたJIS Z 0130では、ケミカルリサイクルはマテリアルリサイクルに含まれています。
■サーマルリサイクルとは
サーマルリサイクル(エネルギー回収)とは、廃プラスチック類を主燃料あるいは助燃剤として利用することによって、焼却エネルギーを発電利用することです。(埋立処理の前工程として容積を縮小させるための焼却処理は含みません。)国際規格のISO 15270では、Energy Recoveryに分類されます。
観点②:プラスチックリサイクルの原料・分別元
プラスチックリサイクルは、リサイクルする原料・分別元によって、「ポストコンシューマーリサイクル(PCR)」と「ポストインダストリアルリサイクル(PIR)」の2つに分けられます。
■ポストコンシューマーリサイクル(PCR)とは
ポストコンシューマーリサイクル(PCR)とは、市場で使用済みの製品を回収、再生資源化することです。
■ポストインダストリアルリサイクル(PIR)とは
ポストインダストリアルリサイクル(PIR)とは、市場に出る前の製品製造工程で発生した材料をリサイクル・再利用することです。JIS Q 14021 (ISO 14021)ではプレコンシューマリサイクルと呼ばれます。
*なお、再生材料という意味では、同一工場・同一工程内で出た廃材の利用、特にプラスチックにおいては成形時に発生するランナー・スプルーのリグラインド材(参照 02_製品を製造する)の利用もありますが、JIS Q 14021 (ISO 14021) やエコマーク認定要件で定められる狭義のリサイクル定義には含まれておりません。
観点③:プラスチックリサイクル後に生まれ変わる製品
プラスチックリサイクルは、リサイクル後に生まれ変わる製品の種類によって、「水平リサイクル」と「カスケードリサイクル」の2つに分けられます。
■水平リサイクルとは
水平リサイクルとは、例えば、回収PETボトルからPETボトルをつくる「ボトルtoボトル」のように、ある回収製品を同じ製品にリサイクルする方法です。
■カスケードリサイクルとは
カスケードリサイクルとは、ある回収製品をリサイクルにより、元の製品とは別の製品にリサイクルする方法です。
このように、リサイクルには様々な種類が存在し、各製品に合わせて取り入れることが可能です。
旭化成からのご提案①
変性PPE樹脂 ザイロン™のリサイクル対応
旭化成では、変性PPE樹脂 ザイロン™の製造時に、リサイクル原料を使いこなす技術・品質の確立、リサイクル後でも性能劣化しない技術の開発、オープンな協業体制の構築を推進しています。
変性PPE樹脂 ザイロン™とは
変性PPE 樹脂 ザイロン™は、ポリフェニレンエーテル (PPE) と他樹脂を混合したポリマーアロイの総称です。
ザイロン™は高い耐熱性を備えた上、難燃性と絶縁性、寸法安定性、耐水性にも優れ、なおかつ低比重といった特長があります。さらに、相手となる他樹脂の特長も生かしながらPPEを添加することによって、PPEの特長との相乗効果を狙ったポリマーアロイです。
サステナビリティにフィットするザイロン™の特徴
ザイロン™には、サステナビリティにフィットする下記3つの特徴があります。
- 優れた耐湿熱性でリサイクル時の物性低下が少ない
- エンジニアリングプラスチック(エンプラ)の中で最も軽量であり、CO2排出削減に貢献
- 様々な樹脂とアロイ・コンパウンドしやすく、再生・リサイクル樹脂とのアロイ化により省資源化に貢献
ザイロン™のサステナビリティにフィットする3つの特長
ザイロン™リサイクルグレードのご紹介
旭化成では、PPEを様々な再生樹脂と混練することで、サステナビリティと機能性を両立するザイロン™のリサイクルグレードの開発を進めています。
ポストコンシューマ―リサイクル(PCR)樹脂を活用し、PCR率15-40%のリサイクルグレードを開発しています。
再生樹脂は、地産地消の考えのもと、各加工場での調達を目指しており、カーボンフットプリント抑制に加え、BCPや物流面にも留意し、体制を整えています。さらに、お客様とより密接な開発が可能であるクローズドスキームについても、パートナーを募集しています。
ザイロン™ リサイクルグレードが提供する価値
PETボトルから生まれた変性PPEーザイロン™リサイクルPET/PPEアロイ
ザイロン™リサイクルPET/PPEアロイは、市場から回収したPETボトル等の廃棄物由来のポストコンシューマ―リサイクル(PCR)樹脂を約40%活用しながら、高い機械物性と低誘電特性をもつ素材です。耐薬品性、耐油性、成形流動性にも優れ、PPEをアロイすることによる性能改善(低比重/低吸水/寸法安定性)も実現します。
金属接合が可能であり、スマートフォンやタブレット端末、ノートPCなど通信機器のシャーシの高機能化(PBT+GF比のさらなる低誘電特性付与、リサイクル原料由来)を可能にします。
ザイロン™リサイクルPET/PPEアロイの特徴
変性PPEザイロン™ PPE/RPSサステナグレード
ザイロン™ PPE/RPSサステナグレードは、変性PPEザイロン™の特長である低比重・耐熱・成形性を維持しながら、ポストコンシューマーリサイクル(PCR)樹脂を活用したPS系サステナグレードです。
PCR率40%のGF20%強化グレードと、UL94 V-0を取得した非強化の難燃グレードの2グレードがございます
リサイクル時の劣化を抑える長寿命化技術
一般的なエンプラでは、製品の使用時とリサイクル(再加熱)時それぞれで樹脂が劣化してしまい、バージン材と呼ばれる未使用品・新品と比べて物性や難燃性が劣ることが課題でした。
旭化成は、変性PPE樹脂 ザイロン™の長寿命化技術を独自開発し、変性PPE樹脂の製品使用時、リサイクル時の劣化を抑え、性能を高く維持することに成功しました。
長寿命化技術を施したザイロン™をご使用いただくことで、高いリサイクル率でクローズドスキームを実現し、サーキュラーエコノミーに貢献します。ザイロン™の既存製品にもこの技術を取り入れることで、お客様の使用用途に応じた長寿命化が可能です。
長寿命化技術の有効活用方法:クローズドスキームリサイクル
旭化成からのご提案②
ポリアミド樹脂 レオナ™ リサイクルグレードのご紹介
ポリアミド樹脂(通称PA、またはナイロン)「レオナ™」では、当社コンパウンド加工場において、持続可能な製品の国際的な認証制度の一つであるISCC PLUS認証* を取得しました。
ポリアミド樹脂は自動車部品や家電、工業製品に幅広く用いられているエンジニアリングプラスチックです。近年、地球環境への意識やサステナビリティの重要性が高まる中、ポリアミド樹脂「レオナ™」においてもさらなる環境貢献の実現のために、リサイクルの取り組みを進めています。
この度、当社工場から発生した規格外品を原料としたリサイクルペレットをコンパウンド加工するスキームにおいて、ISCC PLUS認証を取得しました。規格外品を原料としたリサイクルペレットを用いることで、CFP(Carbon Footprint of Products)値を抑えつつ、ポリアミド樹脂の優れた性能(耐熱性・機械的強度など)はそのままに、お客様のご希望にあわせた設計が可能です。
*ISCC(International Sustainability and Carbon Certification):持続可能性および炭素に関する国際認証であり、ISCC PLUSはEU域外で生産され全世界に販売される主にバイオベースや再生由来等の原料について、サプライチェーン上で管理・担保する認証制度です。
ISCC PLUS認証 レオナ™リサイクルグレードの生産スキーム
本製品のポジショニング
各種ご質問・サンプルのご依頼をお待ちしております。
ご興味をお持ちいただけましたら、是非お気軽にご連絡ください。