インタビュー
2022.05.18
業界コラム
2022年2月2日、欧州連合(EU)の欧州委員会は、国際的な競争力強化を目指すため、新たな「標準化戦略」を発表した。「欧州グリーンディール」や「欧州のデジタル化」というEUの政策に沿い、欧州規格の策定を目指す。
EUはこれまで国際的な規格の策定で主導的な役割を担ってきたが、中国が通信規格の標準化の主導的役割へ意欲を示すなど、EU域外の国やEU域外を本拠地とする大企業の近年の影響力の増大に危機感を示している。同戦略では、EUが気候変動への対応やデジタル化への移行を主導し、急速な発展の続く技術規格に民主的な価値を組み込んでいくためには、より戦略的なアプローチが必要とした。
EUは域内市場で販売される製品について、安全性や互換性で基準を定めているが、今回の戦略では、環境保護や労働基準、データ保護などEUが重視する民主主義的価値観などにも踏み込んだ基準設定システムの確立を目指す。
同日発表の2022年欧州標準化のための事業計画では、優先分野を挙げている。
・COVID-19ワクチンと医薬品の生産 ・電池や電池廃棄物の重要な原材料 ・気候変動に適応したインフラとその資材の低炭素セメント ・水素技術とコンポーネント ・水素の輸送と貯蔵 ・半導体の安全性・真正性・信頼性の認証に関する規格 ・データスペースにおけるスマートコントラクト(*) (* 契約の条件・執行内容を事前に設定したプログラムによる取引自動化)
欧州グリーンディールと欧州のデジタル化の目標を達成し、EU単一市場の強靭性を支えるため、既存の基準をレビューして、改定や新しい基準の開発の必要性を特定するとしている。日本の企業にも影響がありそうな分野も多く、今後の標準化の動向には注意が必要だ。
この記事の初出は (株) 旭リサーチセンター Watchingリポートに掲載されたものです。
この記事は (株) 旭リサーチセンターの 赤山英子 が執筆したものです。
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