インタビュー
営業インタビュー
2025.01.31
インタビュー
旭化成のエンジニアリングプラスチックには、ものづくりの現場で設計や開発に携わるお客様から、製品の課題について日々さまざまなご相談をいただいています。私たちはこのようなお客様それぞれの声に耳を傾け、解決策をご提供しつづけています。
今回は、前回に続き、当社の主要なエンプラ製品の1つである変性PPE樹脂「ザイロン™」の営業を担当する菊池、前田の2名が、どのようにして実際にお客様の声に応え、課題を解決しているのか、その体験談を通じて詳しくご紹介します。
用途=昇華式熱転写方式プリンタ/提案グレード=ザイロン™ X8610
菊池:
私が担当しているお客様は、アミューズメント向けプリンタの新機種立ち上げに際して、「軽量化」および「部品点数の削減」を目指していました。しかし、従来使用されていたアルミ板金材の樹脂化を試みたところ、ABS樹脂では強度不足が問題となり、さらにお客様には樹脂材料の使用経験がほとんどありませんでした。
この課題に対応するため、私たちから提案したのは、「ザイロン™ X8610」とその加工・量産に最適な成形加工業者のご紹介です。
ザイロン営業 菊池
このプリンタの用紙が通る部分では、静電気を外部へ逃がす必要があり、さらに機構部品には難燃性が求められています。こうした要件を満たすために、難燃V-1かつ導電グレードのザイロン™ X8610を提案しました。お客様はそれまでポリカーボネートなども検討されていましたが、ザイロン™ X8610は比重と導電特性と難燃性のバランスが非常に優れているため、自信を持ってご提案しました。
また、成形加工についてのご不安もできるだけ取り除きたいと考え、私からもザイロン™の成形加工の経験が豊富な成形加工業者を紹介し、そのサポート体制などを丁寧にご説明しました。その結果、お客様からは「これならうまくいきそうだ」と好意的な反応をいただきました。
提案を受け入れていただいた結果、アルミ材とザイロン™の比重差により、部品重量を60%削減することに成功しました。具体的には、アルミ5㎏の部品をザイロン™に置き換えたところ2.037㎏になりました。
アミューズメント向けプリンタ
設計課題である軽量化を達成できそうだと、お客様から感謝の言葉をいただきました。部品点数の削減についても、引き続き技術サポート部門と連携して取り組んでいます。
本事例を通じて、樹脂化を提案することで顧客設計に大いに貢献できることを再認識しました。軽量化は、製品に使用する素材量の削減を意味し、SDGsの観点からも有意義であると考えています。今後はリサイクルグレードのご提案なども視野に入れ、さらなる資源消費の抑制とサステナブルな社会への貢献を目指します。
用途=コンバイン運転席のルーフ/提案グレード=その他(別素材)
前田:
私がご紹介するのはザイロン™ではない素材の事例になりますが、材料自体のご提案に加えて成形方法など幅広い視点から課題解決できるという点で、ザイロン™での営業活動と共通する案件です。
ある農機メーカー様のコンバインの運転席の屋根(ルーフ)の改善事例についてご紹介します。これまでこのお客様は、ハンドレイアップ法という工法を用いた海外のFRP(強化プラスチック)製のルーフを使用していました。この方法は安価でしたが、製品が重く、さらに納期対応にも不満がありました。
ザイロン営業 前田
さらに新しい設計では、ルーフの中にエアコンのダクトを通す必要があり、そのために中空構造が求められました。従来の工法でも対応は可能でしたが、それには大幅なコストアップが見込まれていました。
そこで私は、異なる樹脂の2層構造の押出しシートを提案しました。このシートは、直射日光に強い樹脂と、コストが低い樹脂から作られています。これにより、コストを抑えながらも製品寿命を延ばすことが可能です。
さらに、シートを大型真空成形機で加工し、ルーフの外装(アウター)と内装(インナー)を成形しました。これらを接着することで、求められる中空構造のルーフを作りました。この新しい工法は、コストダウン、塗装不要、大幅な軽量化、そして国内生産による納期対応の向上というメリットがあります。
コンバイン
大幅なコストダウンと軽量化を実現し、お客様から高評価をいただきました。金型が安価である点も評価され、新しい工法のルーフが採用されることになりました。その結果、新しい工法で作られたルーフは現在も使用が続いており、他の機種にも広がりを見せています。
この事例を通じて、ザイロン™の営業活動においても、成形方法などについて様々な視点での提案を心掛け、お客様の課題解決に貢献していきたいと考えています。
製品に関するご質問、サンプルのご依頼をお待ちしています