技術・製品紹介
2025.01.20
技術・製品紹介
ロッカーEA材は主にアルミニウムで作られた中空構造の部品で、電気自動車(BEV)の電池パックの側面に取り付けられます。この部品は、側面からの衝撃を受けた際にエネルギーを吸収し、うまく折りたたまれて変形することで、バッテリーに伝わる衝撃を最小限にする役割を担っています。
BEVでは車体の下部全体に電池が搭載されることが多く、側面衝突の際には乗員だけでなく、電池も保護して故障や二次災害を防ぐ必要があるため、ロッカーEA材は重要な部品の一つです。
ロッカーEA材の開発には、まず、側面衝突から電池を確実に保護することが求められます。具体的には、電柱を模したポールに側面から車両を衝突させた際に、一定の要件を満たす「ポール側面衝突基準」をクリアする必要があります。
ポール側面衝突基準試験(イメージ)
一方、電気自動車(BEV)においては、航続距離を延ばすために、より多くの電池パックを車両に搭載することが求められ、同時に車両が軽量であることも重要です。そのため、ロッカーEA材の体積や重量の増加は望ましくありません。
こうした中で、「電池の確実な保護」と「電池パック搭載量の確保」を両立するために、限られたスペースで衝突エネルギーを効果的に吸収できる部材が必要とされています。
旭化成は、エンプラ発泡ビーズ「サンフォース®」を活用したEV電池向けロッカーEA材をご提案します。
従来のアルミ製ロッカーEA材の中空部に、軽量かつ高強度のサンフォース®成形体を充填することで、エネルギー吸収量を増やし、省スペースと軽量化に貢献します。
ロッカーEA材 断面(中空部にサンフォース®成形体を充填)
サンフォース®をアルミ製ロッカーEA材の中空部に充填することで、アルミの変形とサンフォース®の圧縮変形によりエネルギー吸収量を向上させることができます。
下図のとおり、実際の検証では、サンフォース®を充填することでエネルギー吸収量が24%増加しました。
エネルギー吸収量(EA)比較試験の結果
動画:サンフォース®の有無によるエネルギー吸収の比較
以上のことから、幅の狭いロッカーEA材でも効果的に衝撃を吸収でき、部品全体の省スペース化や、アルミ部分の薄肉化による軽量化が可能となります。また、サンフォース®は他発泡体と比較して比強度に優れるためEA性能が良く、耐熱性も良好です。
発泡体 | EA性能 | 耐熱性 |
---|---|---|
サンフォース® | 〇 | 〇 |
発砲ポリスチレン | 〇 | △ |
発砲ポリプロピレン | △ | 〇 |
サンフォース®をアルミ製のロッカーEA材に充填することで、下図の通り、衝撃時の変形モード(折りたたまれ方)を制御することができます。
サンフォース®によるロッカーEA材の変形モードの制御
この変形モードの制御により、下図の通り、「ポール側面衝突基準」で求められる衝突時のエネルギー吸収のばらつきが減少し、再現性が高い部材の開発が可能となります。
サンフォース®の有無によるロバスト性比較
また、変形モードを制御して高いロバスト性を発揮することは、垂直ではなく斜め方向から力がかかった場合においても、効果的に衝撃を吸収できることを意味します。
斜め方向から力がかかった場合のイメージ
これらの特長により、サンフォース®を活用したロッカーEA材は、省スペースかつ軽量でありながら、確実に衝撃を吸収でき、安全で高機能なBEV開発に貢献します。
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