インタビュー
2024.05.22
技術・製品紹介
レーザー溶着で良好な加工結果(高い溶着強度)を得るためには、レーザー出力と加工速度の最適なバランスを見つけることが重要ですが、様々な条件でデータを取得する必要があるため、多くの工数が発生しています。
そこで、旭化成では浜松ホトニクス株式会社と、加工点の温度を測定しながらレーザー溶着を行い、最適な条件をより少ない工数で導き出すことを検討しました。旭化成の変性PPE樹脂ザイロン™を用いた事例をご紹介します。
変性PPE樹脂ザイロン™は、ポリフェニレンエーテル (PPE)と他樹脂を混合したポリマーアロイの総称で、優れた複数の特性を有します。高い耐熱性を備えた上、難燃性と絶縁性、幅広い温度領域での寸法安定性、耐水性にも優れ、なおかつ低比重といった特長があります。さらに、相手となる他樹脂の特長も生かしながらPPEを添加することによって、PPEの特長との相乗効果を狙ったポリマーアロイです。レーザー溶着の適用により小型化・軽量化が期待される、電池部品、電機・家電製品等の用途に数多く採用されている材料です。
浜松ホトニクス社製レーザー「L15570 (T-SMILS)」を用い、10mm, 30mm, 50mm/sec.の3条件の加工速度で変性PPE樹脂ザイロン™にレーザー溶着を施しました。その際、レーザースポット中心Φ1.6mmの温度を計測しました。ザイロンのレーザー溶着サンプルに引張試験を行い、引張強度を測定しました。ここでは結果の概要についてご紹介します。
実験の詳細については、浜松ホトニクス社ウェブサイト をご確認ください。
レーザー出力を上げていくと一定の比率で加工点温度も上昇しました。どの加工速度においても一定のレーザー出力を超えると、加工点温度の上昇比率が変化する(下図における直線の傾きが変わる)のと同時に溶着強度が低下し始めました。この加工点温度の上昇比率が変化するレーザー出力が、溶着強度最大になる加工条件であることが示唆されました。
このように加工点温度に基づいて溶着強度を検証することで、少ない実験回数で最適な条件を予測することができます。
加工点温度に基づくレーザー溶着強度の検証
旭化成では浜松ホトニクス社のように、様々なパートナー企業様と協業させていただきながら各種知見を蓄え、お客様のモノづくりをご支援します。
製品に関するご質問、サンプルのご依頼をお待ちしています